熊本人のくせに熊本ラーメンを忌避し続けたけれど
アイ・ラブ・ラーメン。
私は無類のラーメン好きだ。
しかし、実は高校生の時分までラーメンが嫌いだった。
その理由はというと・・・
私が生まれ育ったのは、熊本県の中でも特に極めて外れの地域である。
自分の行動範囲内には全く以て美味しいラーメン屋がなく、あるのは極々普通のラーメンを出す食堂や、某チェーン店のみだった。
遠出をすることは勿論あったが、現代の様に簡単に情報が取得する時代ではなかった為、否応なしに美味しいお店に出会うことがなかったのである。
なので、(失礼ながら)碌なラーメンを食べたことがなく、「ラーメンは美味しいものである」という認識がなかったのである。
大学生になり、徐々に入ってくる情報量も増え、次第に美味しいラーメンと出会うようになった。しかしそこで出会ったのは正統な熊本ラーメンとは少し変わった流派である
支那そば北熊であり、博多に行った時に脳内革命を起こした博多ラーメンであり、そして断然愛してやまない天下一品のこってりラーメンであった。
要するに、熊本ラーメンに関してはハマっていないのだ。
勿論全く通って来なかったわけではない。しかし、先述した北熊や博多ラーメン、そして天下一品と比較し、全く以て好みのものに出会ったことはなかったのである。
熊本ラーメンとは
出典:食べログ
そもそも熊本ラーメンはどういった特徴をもっているのか?
九州のラーメンと言えば豚骨スープであるが、その発祥は福岡県久留米市と言われる(諸説あり)。
その久留米ラーメンが熊本県の北部に位置する玉名市に伝播したものが熊本ラーメンの始まりと言われているようだ。
長い間熊本では、熊本市の「黒亭」がナンバーワンだと言われ続けていて、それは熊本県人の間でも半ば定説と言っても良いものである。
老舗である「桂花ラーメン」「こむらさき」、そして海外進出もしている「味千ラーメン」等は耳にした方も多い、若しくは実際に食べた事がある方も多いだろう。
あれらが基本的な熊本ラーメンだと言って差し支えはない。
熊本ラーメンの特徴は豚骨スープ(鶏ガラを混合する場合も多い)、焦しにんにくチップ、マー油、やや太目のストレート麺といったところだ。
ただし、多くの久留米ラーメンや博多ラーメンと比較すると豚骨スープのこってり感は押並べて控えめですっきりしたものが多いと思う。
これは極々個人的な感想だが、パンチの効いた印象に強く残る熊本ラーメンのお店は少なく、個性の強いところの多い博多ラーメンよりも変哲がないという印象を持っている。こういったところが私がハマらなかった要素なのだろうと思っている。
ラーメン赤組に行く
そんな感じで、熊本ラーメンにハマっていなかった私だが、一軒気になるところがあった。それが「ラーメン赤組」である。
赤組は生粋のルーツを持ったラーメン屋というわけではない。
「壱之倉庫」というビアレストランを皮切りに、熊本でトップクラスに餃子が旨いと言われている弐之弐、昭和レトロな雰囲気がオシャレな居食屋YOKOBACHI、酒蔵を改装した店内にギャラリーと併設されているカフェレストラン芳文等を展開している会社が運営する姉妹店である。
壱之倉庫や芳文と言えば私達熊本人からすれば昔から(オシャレで)まず間違いのないものを提供してくれる信頼のおけるお店であり、弐之弐は餃子・唐揚げに兎に角揺ぎ無いほどの定評がある存在。その姉妹店として熊本ラーメンを提供しているのが赤組だというのだから、それはきっと間違いがないという思考に至るわけだ。
思い立ったら吉日。ラーメン党の部下を誘って早速訪った。
熊本の中心街の中でも小洒落た飲食店や古着屋、セレクトショップが所狭しと軒を連ねるエリアである上之裏通り。
車がやっと通れるくらいの狭い道を行き交う人々は、分かりやすい繁華街を行く人たちとは違い拘りがありそうな雰囲気を漂わせている気がする。
人波をかき分けいっとき進むと、赤組が姿を現した。
特別凝った感じはないが、如何にもといった大衆的ラーメン店とはやはりどこか違うオーラを醸している。これは期待できそうだ。さすがは壱之倉庫グループ。
こちらがメニュー。カレーラーメンも気になるところだが、今回は初訪問なので基本の熊本ラーメンを食しなければならない。それが流儀というものであると思っている。
私は熊本ラーメンのAセット(900円)、部下はBセット(同じく900円)を注文した。
それにしても、このご時世にこの価格設定ははっきり言って悪魔的だ。
ラーメン単品なら600円。セットにしても1,000円札を出してお釣りがくる。恐れ入った。
ラーメン赤組実食
注文して間もなく、さっそく熊本ラーメンが運ばれてきた。
豚骨のかぐわしさの中、ほのかに感じられる黒マー油の香り。
木耳と葱が色を添え、美しいビジュアルを形成している。
ここまではほぼほぼ王道の熊本ラーメンそのもの。
では、まずはスープから頂く。
うーーーむ。
これは良い。
いたずらにこってりはしていないが、確かなコクが感じられる。
しつこくはなく、でも確実に脳裏に「旨さ」が伝わってくる。
はっきり言って絶妙だ。
これまで食べてきたお気に入りのラーメンのような明確なパンチはないが、かなりレベルの高いスープであることは間違いない。
次に麺。
うむうむ。程よい硬さの中太ストレート麺。
スープを絡めとってくるような縮れ麺とは違い、おもむろに「麺そのものを味わえ」と言わんばかりの主張だ。
これは素晴らしい。麺の確かなコシと旨味が味覚を心地良く刺激してくる。言うことがない。
続いてセットの白飯と餃子が運ばれてきた。
実はこの餃子が楽しみだった。
先述したように、姉妹店の「弐ノ弐」は熊本が誇る餃子の名店である。なので赤組の餃子が旨くないわけはないと思っていた。
いざ。
・・・食べた瞬間、私の脳裏には隅田川の花火大会で打ちあげられる大輪の花火が咲いた(行ったことないけれど)。
極めて・・・極めてジューシー且つ濃厚。そして激旨。さすがは弐ノ弐の姉妹店だ。100人が食べたら101人が必ず美味しいというだろう(どういうことだ)。
最高としか言いようがない。
部下の頼んだセットの唐揚げも一つ貰った。
実は唐揚げに関しても姉妹店の弐ノ弐の名物である。餃子と同様に期待は膨らむ。
乾坤一擲。
箸で両側を掴み、一気に口に運んだ。
な・・・これは・・・
なんということだろう。
カリカリの唐揚げに甘酢ソースと煎り胡麻が合わさり、絶妙なハーモニーが奏でられている。これは・・・まるで・・・
初めて宇多田ヒカルの「Automatic」を聴いた時のような衝撃だ。
日本の音楽シーンに間違いなく天才が現れたと感じたあの時のような・・・。
天才的な唐揚げ。いや、革命的な唐揚げである。
食した後、私は「グランメゾン東京」のキムタクのように暫く天井を眺めていた。
誰かから何かを命じられたならば思わず「ウィー、シェフ」と言ってしまったかもしれない・・・。
熊本ラーメン「赤組」総評
というわけで、ラーメン赤組を総評したいと思う。
ラーメンは基本にほぼほぼ忠実な熊本ラーメンだが、実によく作り込まれていた印象だ。少なくとも、一般的に熊本ラーメンの名店と言われているところや巨大なチェーン店よりも段違いにおすすめしたいレベルだった。
語弊を恐れずに言えば、「衝撃はない。しかし実に旨い。」といったところだ。
しかしながら、前項で述べたように、餃子並びに唐揚げに関しては悪魔的レベルの旨さだった。御見それいったと素直に評したい。
基本に忠実ながらもレベルの高いラーメンと、衝撃的旨さの餃子・唐揚げを合わせて食することで、味のリーマンショックが起きるのである!
出典:食べログ
今回は初訪問だったので基本の熊本ラーメンを食べたが、もしかしたらこのカレーラーメンこそがラーメン赤組の大本命のような気がしてきた。
豚骨とカレーのスパイスが混ざり合った味は、想像しただけでも堪らない。次回は是非実食してみたい。
皆さんがもし熊本に旅行等で来られた際に、「熊本ラーメンを食べる」となれば、是非この「ラーメン赤組」をおすすめしたい。食した後はきっと、満面の笑みでお店を後にすることだろう。
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