不朽の名作フレーム
アイウェアの世界は深くて果てしなく広い。
最近の私はその世界に魅了され、比較的短期間の間にそれなりの知見を身に付けてきたつもりだ。
フランスにもイタリアにも、アメリカにも、そして日本にも膨大な量のブランドが存在していて、それぞれに極めて複雑且つ雄大な潮流が存在している。
勉強すればするほどに面白くて、いまだ全く興味が尽きないほどだ。
どの国のブランドも潮流も好きなのだが、敢えて言えばやはり今のところアメリカンクラシックへの興味が強く、その流れを汲むモデルに目が行ってしまう。
そして今回の主題。
アメリカのアイウェアブランドを語る上で欠かせないブランドが「OLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)」だ。
現在はレイバンやオークリー、ペルソール等を保有するイタリアのルックスオティカ社の傘下にあるが、創業した1980年代にアメリカのアイウェア分野に於いて「ラグジュアリー」なゾーンを開拓した先駆けと言えるブランドである。
アイウェアを収集するにあたって、避けては通れない存在の一つであるOLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)。その中でも定番中の定番フレームである「SHELDRAKE(シェルドレイク)」を購入したのでレビューしていく。
OLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)とは
出典:オリバーピープルズ公式HP
OLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)は1986年にラリー・レイトと弟のデニス・レイト、ラリーの友人であるケニー・シュワルツの3人がロサンゼルス・ハリウッドで創業したアイウェアブランドである。
80年代当時は、まだまだアイウェアは視力矯正の為の道具という認識が強い時代だったが、ラリー等3人はファッションの一環としてのコンセプトを打ち出し、大きなムーブメントを巻き起こしたという。
ヴィンテージのアイウェアをこよなく愛した3人は、精巧な装飾、無駄を削いだミニマリズム溢れるデザイン、コーディネートを意識したバリエーションを用いたアイウェアを発表し、世界中から高い評価を得る。
まさしくアイウェア業界に新風を巻き起こし、業界自体の在り方を一変させたのである。
出典:オリバーピープルズ公式HP
オリバーピープルズは、自社アイテムにラグジュアリーな価値を付加するために販売を高級百貨店に限定するなど工夫し、1989年には日本にも旗艦店をオープンさせる。
プラダ、クリスヴァンアッシュやバルマンなどのファッションブランド、エルトン・ジョンなどのミュージシャンや、アーティスト、映画、高級車等多岐にわたるコラボレーションにも積極的で、ハリウッドスターたちの目元も鮮やかに彩った。
2002年にはアイウェア業界では初となるCDFA(全米ファッションデザイナー協会)にも選ばれている。
出典:オリバーピープルズ公式HP
因みに「OLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)」のブランド名は、マンハッタンのアンティークアイウェアの地下倉庫に眠っていた1500本余りのフレームを物色していた際にその中の古い一枚のオーダーシートに記されていたサインから採ったものであるらしい。何ともアメリカ的というか、ロマンのある経緯(いきさつ)である。
また、有名な〇〇▽▽▢▢のロゴマークはそのままメガネを現わしている。
今やある程度以上造詣のある人が「〇〇▢▢▽▽」のロゴを見れば「OLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)だと分かる程浸透しているが、本当に素晴らしい発想だと思う。
OLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)SHELDRAKE(シェルドレイク)レビュー
概要①
それでは今回の主題であるOLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)のSHELDRAKE(シェルドレイク)についてレビューしていきたい。
SHELDRAKE(シェルドレイク)はOLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)の数あるフレームの中でも定番中の定番。アンディ・ウォーホルの掛けていたアメリカンクラシックのフレームにインスパイアされてデザインされたものである。
アンディ・ウォーホルが掛けていたのは(諸説ありながらも)MOSCOT(モスコット)最古のモデルであるミルゼンだと言われているが、ミルゼンよりもウェリントン寄りの所謂ボスリントンフレームとなっている。
程よい太さのセルフレームで如何にもアメリカのヴィンテージ感漂う逸品である。
概要②(オプテックジャパン、EYEVANとの関係)
先に触れたように、現在のOLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)はイタリアのミラノに本拠を置く世界最大のアイウェアメーカーグループであるルックスオティカに買収されている。なので、現行のOLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)はその殆どがイタリア製ということになる。
しかし、OLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)には日本製のものも存在している。
OLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)は1985年にアメリカ・アナハイムで開催されたオプティフェアウェストに出展。同じく日本のアイウェアブランド・EYEVAN(アイヴァン)も参加していたのだが、そこで両者は邂逅する。
EYEVAN(アイヴァン)のアイウェアの、日本ならではの精巧な作りにシンパシーを感じたOLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)は代理店としてEYEVAN(アイヴァン)をアメリカで展開することに。
そして、逆にEYEVAN(アイヴァン)を展開する当時のオプテックジャパン社はOLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)の一部製造及び販売ライセンス契約を締結した。
こうして生まれた「日本製のOLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)」は「オプテックジャパン期」と言われ、今もなお市場で極めて高い人気を誇っている。現在では流通する本数は少なく、二次流通界隈ではプレ値がついていることも多い(同時に偽物も多く出回っている)。
勿論その後のEYEVAN(アイヴァン)のデザインにも大きな影響を与えているどころか「相互モデル」と言えるようなほぼほぼ同じディテールのモデルさえ存在している。両者は非常に深い繋がりを持つアイウェアブランドなのだ。
生地・カラー
生地はアセテート。
所有しているMOSCOT(モスコット)レムトッシュ ジャパンリミテッド15もそうだが、ブラック以外のカラーの場合はセルロイドよりもアセテート生地の方が発色が良く出ると言われている。
カラーは「COCO2」。ブラックササのような色合いとなっている。
艶やかでクラシック。そして上品なカラーである。
如何にもなデミ柄も良いけれど、こちらの方が大人っぽく、結局のところ私としてはこちらを選んでしまう。
多く流通しているアセテート生地だが、流石に安っぽさは全くなく、程よい重みもある。その存在感は全く以てベストなバランスの上に成り立っており、流石はSHELDRAKE(シェルドレイク)だと唸りそうになってしまうのだ。
ディテール(シェイプ、ブリッジ、リム)
シェイプはウェリントンとボストンの中間的な形状。まさしくアメリカンクラシックを象徴する雰囲気を醸している。
数え切れぬ量のヴィンテージフレームに触れ、ノウハウを培ってきたOLIVER PEOPLES(オリバーピープルス)だからこそ成せる、60~70年代のデザインにインスパイアされたシェイプは多くのアイウェアの名店でも「この手のシェイプの完成形」と称えられることも多い。
リムは程よく丸みを帯びた上辺も美しいが、個人的には下辺のややぽってりとした丸みが好きだ。固くなりすぎず、かといって妙に媚びてもいない。確かに絶妙で嘘臭さがないと感じる。
ブリッジは勿論ヴィンテージに忠実なキーホールブリッジ。全く抜かりなしである。
ディテール(テンプル、丁番、ノーズパッド)
OLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)が得意な彫金はメタルフレームのテンプルでこそ真骨頂が発揮されるので、セルフレームは・・・と言いたいところだが、ご覧の通りきちんと主張されている。
着用した時にチラチラと美しい彫金が見える様が極めて上質だ。
丁番は5枚丁番。高級アイウェアの先駆けであるOLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)なだけあって、イタリア製に移行したとはいえクラフトマンシップは健在だ。
所有しているアイウェアはほぼほぼクリングスタイプの物なので、一体型であるSHELDRAKE(シェルドレイク)に対してフィット感には一抹の不安があったが、計算され尽くしている高さ・形状の為極めて高いフィット感を備えている。初めて一体型特有のフィットの素晴らしさを体感してしまった。
こちらは鼻が低く頬骨がなだらかなアジア人にフィットしやすいアジアンフィットモデルになっているが、一応注意は必要だ。
しかし、デザイン的にはアメリカのヴィンテージの掘り起こしなので、SHELDRAKE(シェルドレイク)はクリングスが付いていると成り立たないことも事実だと改めて感じた。ここまで含めてのデザインなのだ。
付属品
ケースは非常にシンプルだが、だからこそOLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)の伝統と格式を感じ得る。勿論レザーだが芯がしっかりと入っていて重みがある。先述したように、アイウェアに初めてラグジュアリーな要素を持ち込んだ「はしり」なだけあって付属品にも抜かりがない。
開けると〇〇▽▽▢▢のロゴが。このロゴは個人的にとても好きである。
メガネ拭きもスムースな肌触りで同じく雰囲気たっぷり。恐らく今所有しているメガネ拭きの中でも最も高級感はありそうだ。
着用イメージ(サイズ)
今回はサイズ49▢22 145を選んでいる。
所有しているMOSCOT(モスコット)レムトッシュ ジャパンリミテッド15は46▢24 145なので、レンズ幅は大きめでブリッジ幅はやや狭目のサイズ感ということになる。
一回り大きめのサイズに見えるが全長は同じ。これはレムトッシュと若干雰囲気を変えたかったのと、昔のアメリカの雰囲気はやや大きめのシェイプの方が出るのではないかと思ったからである。
私の場合は伊達(クリアレンズ)なので、その方が伊達感も出やすい。
敢えて少し大きめを掛けていると感じられるように計算してのチョイスである。
ギリギリビジネスの場でも適応するし、普段のカジュアルなコーデにも馴染む事と思っている。
先述したようにフィット感は抜群で、抱き込みの感触が心地よい。一体型パッドのホールド感も素晴らしく、ストレスは全く感じない。
メタルフレーム若しくはメタルテンプルのものも所有しているが、やはり安心感はセルの方が上のように思っている。特にSHELDRAKE(シェルドレイク)の掛け心地はなお素晴らしい。
まとめ
改めて、アメリカンクラシックのボスリントンフレームの完成形と言われるOLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)のSHELDRAKE(シェルドレイク)は不滅の名作であると実感している。
多くのブランドや格安メガネチェーンなどからも同型のセルフレームはリリースされているが、やはりこれが一つの答え、完成形だと言って過言ではないだろう。
繰り返しになるが、SHELDRAKE(シェルドレイク)は勿論他のOLIVER PEOPLES(オリバーピープルズ)のモデルは二次流通でオプテックジャパン期の偽物が極めて多く出回っているようなので留意して欲しい。
往々にしてオプテックジャパン期のものがもてはやされるが、十分この現行のイタリア製でも満足できると個人的には思っているので、日本製に拘らず現行のものを選ぶということで問題はないのではないかという意見だ。
アイウェアに詳しい人によると、「ルックスオティカに買収されると(レイバンやアランミクリ然りで)ブランドが死ぬ」「ピープルズは日本製以外掛けられたものではない」という論者もいる。
確かにオプテックジャパン期やルックスオティカ移行後に鯖江で製作しているシリーズの出来はイタリア製の現行よりも質が高いのは分かるが、実物を手にとって使うと、そんなに捨てたものではなく、それなりにちゃんとピープルズのレガシーは継承されているし格好良いということがわかる。
確かに細かいところを見れば鯖江の技術や品質には適わないかもしれないが、ここにあるのは紛れもなく不朽の名作「SHELDRAKE(シェルドレイク)」なのである。
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