YMのメンズファッションリサーチ

メンズファッションについて、ブランド、アイテム、ショップ、人物等様々な角度からリサーチします。

【考察】地方のドレスシューズの選択肢の少なさとフォーマルにおけるリテラシーの関係性について

 

郊外にありがちな問題について

私は熊本県に居住している。当ブログで今まで何回かそのことには触れてきた。

今回の主題は、「地方ではまともなドレスシューズの選択肢がない」という件についてだ。

熊本県について考えることは様々あるにはあるが、今回述べたいのはとどのつまり、ことファッションについてはカジュアルは強いがドレスは超弱いという問題についてである。「選択肢がないというのが最終的にドレスの弱さと関連付いている」という事を今から説明していきたいと思う。

熊本県の県庁所在地である熊本市は昔からストリートと古着がとても強く、路面のセレクトショップもその分野であれば幾つか名店が存在している。

とても小さな都市の割にはよく「オシャレな人が多い」と言われるようだが、それはあくまでもカジュアルに関してのことだと断言できるものである(因みにラグジュアリーは百貨店に一通り揃っているようだが、品揃えという意味ではやはり潤沢ではないようだし最新トレンドを追いかける人にとってもやはり物足りないだろう)。

逆に、とてもドレスには弱い。フォーマルな場での最低限のマナーさえも分からない人が多いことは(私の中では)定説的で、いくらカジュアルでオシャレの知見があるような人でも冠婚葬祭にボタンダウンシャツを着てきたりラペルのないジャケットを羽織ってきたり、ワークブーツで参列したりするという特徴を持つ人も良く見かける。

日本有数の都市部にそんな人はあまり多くいないだろうと思うが、郊外ではごくごく当たり前の光景なのだ。カジュアルとドレスの知識が分断されているような気さえする。

私もカジュアル専科だしメインのフィールドはドレスではなくかなりカジュアル寄りだと自覚しているが、正式な場におけるリテラシーは持ち合わせているつもりだ。インフォーマルなフィールドでのファッションも、その地盤があってこそのものだと思っている。

 

リテラシーが低下すると思われる仕組みを考察

 

ジャランスリワヤを購入した経緯

では、何故地方になればなるほどそういったリテラシーが低くなってしまうのか。都会の方が洗練された感覚(というかマナーや常識)が身に付くのか。

その答えは意外と簡単だ。それを今から述べる。

 

こちらは私の所有している内羽根ストレートチップ。ジャランスリワヤのものだ(ユナイテッドアローズグリーンレーベルリラクシング別注)。

このシューズに関しては

tradman-dc.com

こちらの「トラッドマンに憧れて」の記事を参照頂きたい。全く同じもので、管理者のだっちさんが詳細にレビューしておられる。なので今回私はこのジャランスリワヤのレビューは控える事にしようと思う。

画像は購入時のもので、もう数年前になるが、当時の私はずっと愛用していた内羽根ストレートチップのドレスシューズ(こちらはスコッチグレインのもの)がいよいよ限界を迎えた為、新調しなければと思っていた(レザーソールの張替えを数回行い大事に履いてきたが流石に10年以上経過しお役御免となった)。

近年様々なものをネットで購入するようになってはいたが、ドレスシューズだけは絶対に店舗で購入しなければならない。スニーカーなどと違い、非常にデリケートなサイズ選びがつきものだからである。

というわけで、熊本の中心部に買い物に出かけた。

熊本市には「百貨店」というものが1カ所しか存在していない。私はまずその百貨店の紳士靴売り場へと向かった。以前そこでスコッチグレインのストレートチップを購入した履歴があったからだ。

しかし、売り場のラインナップは・・・

  • REGAL(リーガル)
  • madras(マドラス)
  • 浅草靴誂(あさくさかちょう)
  • Crockett&Jones(クロケットアンドジョーンズ)

といった感じだった。他にもちょこちょこと何かしら置いてあったかもしれないが大体主だったものはそんなところだったと記憶している。

REGAL(リーガル)とmadras(マドラス)はちょっとその時の自分の射程にはなく、浅草加靴誂は粋なセレクトかも知れないがまだよく存じていないブランドだったので多少気が引けた。そしてクロケット&ジョーンズは10万円オーバーなので予算内ではなかった。

・・・何という選択肢の少なさ・・・。以前は日本が誇るコスパブランド・スコッチグレイン等もっと幅広いラインナップが用意されていた筈・・・。

これでは、予算が10万円以内だという人の選択肢はリーガルかマドラス(か浅草靴誂)のみということになってしまう。それではあんまりだ。

その後私はあちらこちらのセレクトショップ等を巡り、結局ユナイテッドアローズグリーンレーベルリラクシングでジャランスリワヤを購入するに至った。

 

熊本市のドレスシューズ選択肢

その際に、熊本市で購入できるドレスシューズのブランドをそれなりに調べたのだが、

  • 百貨店 ⇒既出の通り クロケット&ジョーンズ リーガル マドラス 浅草靴誂
  • 直営店 ⇒リーガル(ケンフォード)、ハッシュパピー
  • 全国展開のある大手セレクトショップ ⇒パラブーツ、サンダース、クロケット&ジョーンズ、トリッカーズ、バーウィック、ジャランスリワヤ、リーガル(セレクトショップの品揃えはかなり流動的なのでその時々で違いは大きい。因みに大手セレクトショップは屋号は同じでも地域ごとにセレクトブランドの内容はかなり違いがあり、熊本で手に入るブランドの質は都会とは比較にはならない)
  • その他路面店等 ⇒パドローネ、パラブーツ、サンダース

※百貨店内にあるラグジュアリーブランドにもドレスシューズは置いてあるだろうが、普通の感覚で入るような世界観の店舗ではないので除外。それにそもそも紳士靴をラグジュアリーブランドで探すのは一般的ではないだろうし、セレクトショップでもないから当該ブランドのものしか置いていない筈だ。それは純粋なシューズブランドのものではないということになる。

多分に見落としもあるかもしれないが、凡そこんなものだ。

・・本当にこれだけなのである。

先述のように、ドレスシューズは実店舗での購入がマストだ。特に初めてのブランドのものをネットで購入するなど、正気の沙汰ではない。いや、履いたことのあるブランドでもモデルや木型が違えば全く勝手が違うので、やはり似たようなことである。

ということは、熊本でちゃんとしたドレスシューズを購入したいと思ったら、10万円予算があるならばクロケット&ジョーンズ。そこまでないならば浅草靴誂、ジャランスリワヤ、リーガル、マドラス・・・そんなところしかマジで選択肢がないのである。

 

そしてリテラシーの低下に

トリッカーズは内羽根のストレートチップがないし(そもそもフォーマルな場では使えないモデルが多い)、サンダースも(熊本では)外羽根のダービーシューズしか見たことがない。パラブーツは代表的なモデルはノルウェイジャン製法で元々ドレスの作りではない。バーウィックも某大手セレクトショップにローファーかセミブローグが置いてあったのを見たくらいなので、内羽根ストレートチップの選択肢は特に少なくなる。

リーガルやマドラス、ジャランスリワヤが自分の足に合わなかったら、一体どうすればよいのか・・・。

さて、本題にようやく戻るが、要するに、「売っていない」のである。今回はドレスシューズの話をしたが、それはスーツやドレス小物に関しても全く似通った話になってくる。

「ない」から興味が湧かない。

いや、逆も然りかもしれない。

「売れない」から置かない。

これは「卵が先かヒヨコが先か」という論理のようだが、いずれにせよその悪循環で地方では正式なものの選択肢が限られたものになってしまい、その挙句リテラシーは低下していく。

クロケット&ジョーンズは革靴の世界では頂上ブランドとまでは行かないかもしれないが一流には違いなく、少なくとも興味のない人たちからすれば手が出しにくいブランドである。興味はないけれど持っておかないとと思っている人に10万円の靴は少々高すぎるのだ。

こうなると、多くの人がスーツを買った量販店でセットになっている靴やABCマートに売ってあるセメント製法の1万円以内で買えるもの等を買うのが常態化し、それなりにきちんとしたものを持っている人の割合が低下する。

そういう流れは伝播し(周囲の人間がそういうものを履いているからそれでいいといった感じだ)、やがてリテラシーの低下に繋がってしまうような気がするのだ。

 

もう少しどうにかならないものだろうか

私は普段仕事ではスーツを着ないので、このジャランスリワヤの出番は本当に限られている。実際にまだ数回しか日の目を浴びていないほどだ。

しかし、内羽根のストレートチップは常識のある大人にとっては必携の靴である。昨今正式な考え方は随分風化してきてはいるものの、それでもやはり元々は最もフォーマルで冠婚葬祭に履くべきものは黒の内羽根ストレートチップと決まっている。カジュアルと違ってフォーマルには明確なルールが存在しているのだ。一昔前と違い、例えば結婚式に茶靴やウィングチップを履いてきた人に「マナー違反だ」と怒る人は最早いないかもしれないが、そういう感覚は時代が移ろっても本当は変わってはならない大切な要素である。

ジャランスリワヤは高級革靴には分類されはしないだろうが、「どこに履いて行っても恥ずかしくはない」部類には滑り込みで入る優秀な靴だと思っている。ギリギリ熊本でこれを手に入れられるのは救いだと言えよう。ユナイテッドアローズグリーンレーベルリラクシングさんには今後もずっと定番で扱ってもらって、熊本店にも常備しておいて欲しい。これに救われている人はほんの一握りかもしれないが確実に存在している事だろうと思う(あと、アーバンリサーチにも置いてあったので同様のことを言いたい)。

そして、百貨店の紳士靴売り場(のバイヤーさん)にはもう少し頑張って欲しい。

インポートとは言わないが例えば国内ブランドの大塚製靴、三陽山長、ユニオンインペリアル、スコッチグレインあたりを置いてもらえるとグンと空気感が変わるかもしれない。勿論ジョン・ロブやエドワードグリーン、JMウエストン、オールデン等の一流インポートも揃っていればいうことはないが・・・。熊本で1カ所しかない百貨店なので県民としては拠り所だし、当該地のリテラシーを現す部分なのではないかとも感じるのだ。

このように、地方に行けば行くほどフォーマルに対する意識が低下するこの風潮は、それこそ地方に住んでいる身からすれば由々しき事態だと感じている。特になかなかネットで購入するのが厳しい革靴は私からすれば小さくない問題で、どうにかならないものだろうかと思案するばかりだ。

勿論、「たかが」装いの問題だし、「たかが」靴の問題だ。人間性や在り方そのものを否定している気は毛頭ない。寧ろ、興味のない方にとっては多少気分を害する内容になったかもしれない。

しかし、装いはちょっぴりかもしれないけれど人生を豊かにする。

「良い靴は良いところに連れて行ってくれる」とも言う。

熊本市で買える中間価格帯のドレスシューズの選択肢が増えると、県民の幸福度が微増する可能性もなくはないのではなかろうかと思ったりもしている。

地方都市のフォーマルに関するリテラシーの低さと当該地で入手できるドレスアイテムの選択肢の少なさは無関係ではないだろう。

 

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