YMのメンズファッションリサーチ

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【新疆(しんきょう)綿】新疆ウィグル自治区の問題に私達はどう向き合うべきか

目次

 

勇気ある決断をしたH&M

出典:H&Mが声明を発表 「新疆ウイグル自治区拠点のいかなる縫製工場とも協働していない」 | WWDJAPAN

 

H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ、以下H&M)は、中国の新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル人たちの強制労働に対する報道を受けて、「新疆ウイグル自治区に拠点を置くいかなる縫製工場とも協働はしておらず、当該地区から製品の調達も行っていない。当社ではサプライヤーリストを公開しており、同リストでは製造拠点や工場、製糸業者などの名前および所在地に関する透明性のある情報開示をしている」と声明を出した。

 引用:H&Mが声明を発表 「新疆ウイグル自治区拠点のいかなる縫製工場とも協働していない」 | WWDJAPAN

 

2020年のことですが、スウェーデンのH&M(へネスアンドマウリッツ)は中国の新疆ウイグル自治区でのウイグル民族強制労働問題に関して強く非難する声明を発しました。同時に強制労働疑惑が晴れるまで一部の中国サプライヤーとの取り引きを段階的に停止することも声明しています。

この「新疆ウイグル自治区問題」は非常に根深い問題で、簡単に述べることや白黒つけることは困難ではありますが、「新疆綿」は私達にとっても非常に身近な存在です。

後述しますが、多くのアパレル企業が様々な事情から曖昧な態度をとったり濁したりしている中、H&Mはもっとも明確に「人権擁護」の観点からこの問題について「否」の態度を表明しました。白黒つけるような記述をするつもりはないですし、政治的な記事にするつもりはありませんが、このH&Mの方針はクリーンそのものだと思います。

 

新疆ウイグル自治区とは

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出典:監視下の取材で見た涙 ウイグル族の女性「私は中国人」:朝日新聞デジタル

 

新疆ウイグル自治区は、中国の一部であり、中国全土の約1/6の面積を占めます。新疆ウイグル自治区で生活するウイグル民族は中央アジアの遊牧民族「チュルク」を先祖とする「非中華民族」。ウイグル人の分布はキルギスやウズベキスタン等の国に分かれており、信仰している宗教はイスラム教。新疆以外の国は独立していますが唯一新疆のみは中国の一部になっています。ここが問題で、中国は中国共産党の一党独裁国家。国家の在り方として中国共産党以外のものを信仰する者を許すわけにはいかない事情があります。そうしないと国家自体の基盤が崩壊してしまうと考えているわけですね。まったく、古代から宗教や主義と国家、戦争などは非常に密接な関係を持っているわけです。

 

2014年爆破事件以来関係が悪化

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出典:ウルムチ駅爆発事件 - Wikipedia

 

1950年の自治区成立以来中国政府とウィグル民族の小競り合いは頻発していたのですが、決定的な出来事が2014年に起こります。中国共産党の国家主席習近平が新疆ウイグル自治区の初視察に訪れた際に主要駅であるウルムチ南駅が爆破されます。この爆破事件では死亡者も出ています。この後、中国政府は爆破事件の首謀者は過激派のウイグル人と発表。ここから中国政府と中国共産党のウイグル人に対する態度は非常に強固なものになっていきます。習近平はウイグル人に対する恐怖や憎しみが植え付けられたと公に話しています。口上では「ウイグル人の再教育」「イスラム教の中国化」という耳障りの良い(良くないか・・・)言葉で飾っていますが、その実は自治区の監視体制強化、イスラム教の伝統や文化を全否定し徹底的に弾圧するというものだと言われています。他にも平和に日本で暮らす私達には想像を絶するような出来事が起こっていると報道されていますがここでは詳細の記述は控えます。強制収容や強制労働もその一環というわけです。

 

アメリカが見逃すはずはなかった

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出典:毎日「トランプがウイグル人権法案に署名」 朝日「トランプがウイグル人収容施設を進めるべきと発言」 共同「トランプが真珠湾を持ち出した」 時事「トランプは香港デモに関わりたくない」 誰を信用したらいいんだよ… – 日本ニュース24時間

 

そんな新疆ウイグル自治区問題ですが、中国の最大のライバルアメリカが見逃すはずはありません。まことしやかに囁かれていた国際人権問題を全世界的にスタンダードな問題に引き上げたのは他でもない当時のアメリカ大統領ドナルド・トランプです。トランプは大々的に新疆ウイグル自治区問題を非難し、それはアメリカ全土、果ては世界中に飛び火していきます。アメリカ大統領の影響力は今もなお絶大。これはトランプの外交上のカードだと言われています。ライバルである中国の脇腹に一発入れる要素を見つけたという事なのですね。思惑通りに、世界中のメディアがこれは国際的な人権問題だと一斉に非難し始め、その過熱ぶりは想像を絶するものになっていきます。

中国を国際的に孤立させる足掛かりにしたいアメリカと、一帯一路構想(ユーラシア大陸から欧州の陸路と南アジアからアラビア、アフリカの航路を一つの帯として結ぶシルクロード再建計画)を悲願とする中国の責めぎあいはまだまだ決着はついていません(新疆ウイグル自治区は一帯一路の陸路の重要な拠点になる位置にあるため)。

 

新疆綿について

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出典:https://stock-clip.com/video-footage/cotton%20field

 

現在(コロナ禍以前)、世界の綿花生産量は以下のようになっています。

1位 中国 (約604万トン)

2位 インド(約535万トン)

3位 アメリカ(約405万トン)

中国の綿花生産量は世界一(世界の約40%程度)。そして新疆ウイグル自治区で採れる「新疆綿」は中国国内の綿花生産量の約8割を占めており、世界的に見ても2割弱となっているのです。また、カラーコットンに至っては世界の5割近いシェアを持つと言われています。これは全世界的に見ても巨大産業と言えるもの。

 

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出典:新疆、綿花の収穫期迎える - SankeiBiz(サンケイビズ):自分を磨く経済情報サイト

 

新疆綿はギザ綿、ピマ綿と並び世界三大コットンと言われています。内陸の気候風土が綿花作りに非常に適しており、上質と言われる超長綿である新疆綿が作り出されるのですね。ピマコットンやギザコットンと同じく、新疆綿も私達の身近に必ずあるものです。綿製品と言えば衣類だけではなく、タオルや寝具などその幅は広く暮らしに欠かせない物だといえます。

 

肯定か、否定か

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出典:【中国】アパレル業界団体FLA、新疆ウイグル自治区からの調達・生産を禁止。深刻な人権侵害と判断 | Sustainable Japan

 

コットンはアパレル業界にとって切っても切れないもの。この問題についてほぼすべてのアパレル系グローバル企業は判断の岐路に立たされます。

新疆ウイグル自治区の問題を非難すれば中国政府(中国共産党)から抗議され中国国内でのマーケティングに大きな支障を来します。中国は非常に大きな市場です。莫大な人口ボーナスを抱える中国は、ほぼあらゆるグローバル企業のマーケティングに於いて重要な役割を果たすことは間違いありません。人口の多いところで商売することは基本ですからね。それにコットン自体の調達もし難くなってしまいます。

しかし逆に新疆ウイグル自治区の問題を肯定すると、それを公に非難しているアメリカや他諸国の批判を買ってしまいます。人口ボーナスや新進企業の勢いが以前ほどなくなっている欧米諸国ですが、それでもまだまだアメリカを筆頭に影響力は絶大。そこから着目されてしまえば小さくない影響が出ることは必至です。

このようにアパレル企業は大きな分岐点に立たされてしまうというのがこの問題の一つのポイントでもあるのです。

 

アパレル企業の判断

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出典:H&M、ストックホルム本社の従業員が7月に職場復帰 _小売・物流業界 ニュースサイト【ダイヤモンド・チェーンストアオンライン】

 

先述したようにスウェーデンのH&Mは真向から中国政府(中国共産党)の新疆ウイグル自治区への対応を非難し、取引上の制限をかけました。その結果、中国国内で不買運動が起きたり、一部店舗が閉鎖したり、地図アプリではその表記が抹消されたりと様々な影響が出ています。

 

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出典:Nike. Just Do It. Nike.com (JP). Nike 日本

 

アメリカのナイキは独自の声明文を発し、「新疆ウイグル自治区のコットンを使用しておらず、発注先等も含めて何も関係するところはない」としました。これは事実上の非難と捉えられ、中国ではSNSでエアジョーダン等のナイキ製品を燃やす動画が投稿されたり、イメージキャラクターである著名タレントとの契約打ち切りなどの影響が出ています。

海外企業ではこのほかIKEAやパタゴニア等も異議を唱えています。

 

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出典:UNIQLO

 

日本のユニクロは「政治的発言は控える」「政治的問題ならば中立である」と、ある意味傍観・無関与の姿勢を保っています。こう言うからには新疆綿の仕様は勿論あることでしょう。これを受けてアメリカはユニクロ衣料の輸入停止の措置をとっています。

 

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出典:ROMI PHOTO BLOG: ×無印良品

 

無印良品を運営する良品企画は「(独自調査の結果)強制労働の事実はない」とし、新疆綿の使用を継続する方針をとっています。無印良品ではインド綿の方が使用頻度は高いようで、仮に新疆綿の使用をストップしても他企業ほどの影響は無いとしています。また、強制労働の事実確認が明らかでない段階でストップをかけるのはいたずらに現地の雇用に影響を与えかねないことだともしています。これもまた見逃せない視点と言える可能性はありますね。

 

出典:新疆綿、ワールドやミズノ使用中止 | ファッション衣料とサステイナビリティ (east-wind2019.com)

 

少々前の段階での資料ですが、国内の主要企業の状況はこのようになっています。ミズノやワールド(タケオキクチやシューラルー等を運営)は不使用側。三陽商会やワコールなどは使用側ですね。ユナイテッドアローズやアダストリアはノーコメント。ただし、「不使用」というのは事実上どうなのか。その実は企業によって少し趣が異なるものなのかもしれません。

 

新疆ウイグル自治区の問題にどう向き合うべきなのか

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出典:決断迫られるファストリ、無印。ほぼ全ての日本人が新疆綿使う現実どう考える? - 記事詳細|Infoseekニュース

 

新疆ウイグル自治区の問題は、事の発端はやはり宗教。そして共産主義(中国)VS自由主義(アメリカ)という宿命の対決と言えるでしょう。今も世界中で巻き起こる悲惨な戦争の大半はそういった背景を持っています。誰も戦争はしたくないし、民族迫害もしたくはないのではないかと思いますが、それ以上に譲れないものがあった時、そうせざるを得ない状況というものは生まれてしまいます。人類は悲しくもそういう悲劇を繰り返してきています。

新疆ウイグル自治区の問題が世界的に批判され始めた契機を作ったのはアメリカ。これも正義感や人権擁護の観点からというよりは外交上のカードであるという向きが強いのも明らかと言われます。新疆綿のシェアが減少すれば自ずとアメリカンコットンの供給量も上がり、アメリカの農家への忖度になるからです。もう終了しましたが、大統領選において材料の一つとしたかったという事でしょう。特に富裕層よりも一般階層に支持者を多く持つトランプとしては農家への忖度は小さくない要素だったと言われています。

私達の生活はこのように、裏にある意図の元動かされていることも少なくはありません。

・・・まあ、それは置いておいて、コットンを取り扱う事を避けられないアパレルをはじめとする企業は先述したように判断の岐路に立たされていますが、日常生活上にコットンが欠かせない私たちとて無関係ではありません。

搾取や迫害、そして政治的虚偽や操作等、何を信じることができるのか分かりにくいこの世の中で、誰が述べることを信じて、何を使う事を選択するのか、一人一人が熟考するべきなのかもしれません。私達の身近にも新疆ウイグル自治区で生産された新疆綿が必ずあるのですから。とりあえず私は、H&Mに何か買いに行こうかと考えています。

 

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