出典:ロックオンキング
Mr.childrenの楽曲の中で、自分のベストナンバーは何なのだろうと、先日ふと考えていた。Mr.childrenの楽曲は本当に多いので、ちょっとやそっとでは絞る事ができない。
大袈裟ではなく半日程度考え、幾重にも逡巡し、辿り着いた答えは「名もなき詩」という結論だった。
Mr.childrenと私
出典:Mr.Children(ミスチル)「SINGLES」歌詞の意味とは? | リリカタ
ブログ立ち上げ初期に狂ったように書きなぐったMr.childrenについての記事。私は思春期の頃からずっと、Mr.childrenを追いかけてきた。いや、彼らの影を踏みながらここまで歩き続けてきたと言っても決して過言ではない。
2017年に行われたツアーのファイナル(熊本で開催)に参戦し、それまでの自分ながらの集大成とすることが出来たのは一生の思い出である(しかも自分の参戦したライブがDVD化されたのも過ぎたおまけだった)。
過去記事でも述べたが、Mr.childrenの最大の魅力は、等身大の人間として苦悩し、浮き沈み、逡巡し・・・そんな姿が透けて見えるところなのではないかと思っている。だからいつも私達は日々の中での自分自身の姿を投影し、共感する。ごくごく勝手にだが、いつも自分の傍で一緒に思い悩んでくれる存在、それが桜井和寿とMr.childrenだった。
それと、こちらのMr.children×NTT docomoの25thアニバーサリームービーを視た時、この映像とマッチする楽曲をタイアップできるのは、長年に渡り第一線で活躍しているMr.childrenにしか成しえないことであるとも感じた。
それは即ち、私達の今までの人生のどの場面でも思い出せるような、印象的なヒット曲が数多くあるという事。私達は自らの思い出を振り返る時、当時流行っていた楽曲を重ね合わせて思いを馳せることが多い。絶え間なく、多くの人々の印象に残っている楽曲を長年リリースし続けなければこんなCMは作れるはずがない。まさにMr.childrenとはそんな存在なのだろうと感じずにはいられなかった。
マイ・ベストナンバーは何だろうか
出典:Mr.Children、デビュー作品から最新作品まで全シングル&アルバムを配信決定 | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス
そんな中、自分のベストナンバーは何だろうかという点についてだが・・・
今までも考えたことはあった。とてもたくさん。
例えば、少し前までは・・・
アルバム「SENSE」に収録されている隠れ名曲「ハル」。感覚的な話になるが、今まで様々な苦悩と闘ってきた彼らのその時点での答えが凝縮されているような、静かながらも突き抜けた印象をこの曲から受けた為である。ほぼ全ての思いを包括的に表現できているような感動的な楽曲だ。
しかし、この楽曲が素晴らしい名曲であるという事は疑いようもないのだが、自分の中に、ベストナンバーに有名なシングル曲を挙げてしまうとにわかファンのようにならないかというくだらない感情が混ざっているような気もしてきた。だからアルバム曲であるナンバーを選んでいるのではないかという・・・(もしもそうならば何ともくだらない)。
そして・・・
「himawari」。これは小林武史プロデュースから卒業した後のスタートとしての象徴のような曲で、イントロも楽曲全体からも本来の彼等の矜持が感じられそうなロック色の強さが伝わってくる。しかし纏っている雰囲気は強さと儚さとしなやかさが絶妙に入り混じっているもの。歌詞も強い意志と無常のコントラストが否応なく表現されている。白眉。感無量だった。
これで結論だと思っていた。マイ・ベストナンバーは「himawari」。ある意味一つの答えと言って良い!
名もなき詩の歌詞に込められた意味
出典:Mr.Children/名もなき詩 | 完全無料画像検索のプリ画像 | Original image, Movie posters, Poster
しかし、である。本当にそれでいいのだろうか。himawariは大好きだ。でも、本当にいいのかな。
それで冒頭の状態に至るわけだが、改めて名もなき詩の歌詞を眺めてみた。
君が僕を疑っているのなら
この喉を切ってくれてやる
Oh darlin 僕はノータリン
大切な物をあげる
引用:名もなき詩 桜井和寿作詞
鋭利な刃物と柔らかな真綿が表裏一体になっているかのような双極性を感じるこの部分。当時疲弊しきっていたという桜井和寿の心理がストレートに表現されているかのようだ。
「ノータリン」の部分はTV出演の際に改変を申し付けられた部分だそうだが、言いつけを守らずにそのまま彼が歌っていたのを私も知っている。それが正しいかどうかは言及しないが、フレーズの持つ社会的な意味云々よりも自らのストレートな意思をピュアに伝えたかったのだろうと推察している(そういえば名もなき詩は月9ドラマ「ピュア」の主題歌だ)。
「大切なもの」とは何なのだろう・・・このような心理状態で、何を指すのだろうか。思春期の頃私は相当な時間考え、思い悩んでいたが答えはついぞ出なかった。具体的な何かを示すわけではなく、極めて文学的な表現だという事を、大人になった今であれば理解することが出来る。
君の仕草が滑稽なほど
優しい気持ちになれるんだよ
Oh darlin 夢物語
逢う度に聞かせてくれ
引用:名もなき詩 桜井和寿作詞
対比的な表現を用いてストレートな愛を歌っている部分。愛する人がロジカルな表現で物事を語ってくるよりも、その真逆であった方が自分の胸を落ち着かせてくれる・・・。一見美しいように見えるが、何故そのような境地に陥っているのかを推察すると、心の荒みや憔悴ぶりが容易く想像できる。
当時の自分にはよくわからなかった事だ。今の自分になら、なんとも気持ちを揺さぶられる語り口だと思える。様々な出来事に心を痛めながら生きる毎日の中で、ひと時の安らぎを求めたい。その時間を、私達は無意識に求めてしまう。
成り行きまかせの恋におち
時には誰かを傷つけたとしても
その度心いためる様な時代じゃない
誰かを想いやりゃあだになり
自分の胸につきささる
出典:名もなき詩 桜井和寿作詞
そして、ここ。世間と自分自身に銃を突き付けるかのような強烈な心情を吐露する。様々巡って、最後に残るのはやはり絶望や失望だったのか・・・
しかし・・・
だけど
あるがままの心で生きようと願うから
人はまた傷ついてゆく
知らぬ間に築いていた
自分らしさの檻の中で
もがいているなら誰だってそう
僕だってそうなんだ
愛情ってゆう形のないもの
伝えるのはいつも困難だね
だから darlin この「名もなき詩」を
いつまでも君に捧ぐ
引用:名もなき詩 桜井和寿作詞
『それは人ならば当たり前のことであって、誰もが似たような苦しみを背負っているという意味では、みんなある意味同じなんだ。そう、僕だってね。
苦しみから解放してあげられるような詩は歌えないかもしれないけれど、せめてこの名もなき詩を捧げるよ。』
そんな風な柔らかく優しいメッセージで締め括られている。
生きていくのは苦しく、辛い。上手くいかないことの方が多い。
あるがままの心で生きようとしても自分自身も傷つくし、時には周囲を傷つけてしまうことだってある。人の心は実に面倒で、複雑で、難解だ。
愛情を伝えることだって、そう。
自分の中にあるかたちのないものだから。きっとそのすべてを、全容を大切な人に伝えきることは不可能なのかもしれない。
『でも、分かってね。この伝えたいという気持ちを。』
名もなき詩は、(多分)そんな生きていく苦しさ・難しさ、伝わらない(分かり合えない)辛さを歌っていて、桜井和寿自身の(当時の)苦悩を皆に分かってほしいという魂の叫びのような意味合いも多分にあったのではないかと思う。
ただし、彼の抱えている苦悩は、きっと同時に多くの人々が朧げに感じている感情を言語化した共通の物なのだ。
『みんな、そうだよね。苦しいよね。うん、僕だってそうなんだ。』
そう桜井和寿に語り掛けられて、大勢のファンが胸を突かれたのではないだろうか。
名もなき詩は「現在(いま)」の自分に刺さる
出典:出田 幸太のMr.Children Thanksgiving25 - Dailymotion
Mr.childrenが名もなき詩を発表したのは1996年。今から27年も前のことだ。当時16歳足らずだった私には、やはり上辺をなぞるような理解だった。当時から好きな楽曲だったことには違いないが、今はまた見方が違う。当時とは比較にならない程人生経験を積み、少なからず辛酸を舐め、自分が傷付いたり、他者を傷つけてもきた。
そんな今、改めて名もなき詩を聴くと、全く違う詩のように聴こえる。何と言う事だ!こんな意味だったのか!という具合だ。
桜井和寿は名もなき詩を発表した時は現在の私よりもうんと年下だったはず。全く頭が下がる思いである。そんな早くこの境地に達する事なんて、できるの?やっぱり間違いない天才だ。
これは想像だが、桜井和寿もMr.childrenも、1996年当時と今ではこの楽曲に対する自身の理解も随分変化しているのではないだろうか。
同じ歌でも、自身が変わっていけば見方が変わる。そういう楽曲は沢山あるかもしれないが、特にこの名もなき詩はそういった類の最たるものの一つなのかもしれない。
大人になった今、数多存在するMr.childrenの楽曲の中でこの心を最も揺さぶる楽曲だと素直にそう思えた。
2023年時点で、Mr.childrenのマイ・ベストナンバーは「名もなき詩」だ。
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