先月位のある日の事。左肩が痛むことに気付いた。
何の拍子に気付いたかというと、就寝時である。
僕は往々にして左側に側臥位の姿勢で就寝するのだが、重心が掛かっている肩の部位がズキズキと痛むのである。
真夜中にそれが発覚して、気になってしまいその日は余り眠れなかった。
放っておけば治るだろうと考え放っておいたのだが、一向に改善する気配はなく、寧ろ重い荷物を持つ際や入浴中に左手で右の腕や腋を洗う時に激痛が走るようになってしまった。
これはいけないと思い、腰痛でたまに通院している整形外科に受診したというわけだ。
(待合中に退屈だったので撮影したもの)
問診の段階で「四十肩の可能性が高いですね」と看護師から言われたが、その後エコー検査、レントゲン検査を受けて、その結果を基にした医師の診察の際にはっきりと「四十肩ですね」と診断された。
・・・ところで、元々「五十肩」と言われていたこの症状は、四十代で発症することがあることから最近では「四十肩」と言われるようになったらしい。
医師は「明確な要因は不明」と言っていた。四十肩とはそういうものだというのだ。
これだけ進歩した現代医学を以てしても原因不明の疾患とは・・・。そんなことがあるのだろうかと考えてしまった。
整形外科での一連の行程の最中で、新たな発見ともいうべきことがあった。
患部の炎症度合いを測るためにエコー検査をしていた時の事だった。
検査技師が両肩にジェルを塗って検査用の機器を当てていく。
患部は左肩だが、左右差を明確にするために非患部である右肩にも同様に施行するとのことだった。
「うん?」
幼顔でおかっぱへアの男性技師が右肩に機器を当てた際に小さくそう呟いたのが聞こえた。
「どうかしましたか?」
と聞くと・・・
「YMさん、右利きですよね?」
と若干怪訝そうに返す。
「はい。正真正銘の右利きですが・・・」
反射的にそう返したが、何故このおかっぱ頭の技師がそう思ったのか不思議に思った。
「ひょっとしたら、生来は左利きだった可能性があります。左側の方が明らかに筋肉が発達しているのです。」
ええ~。・・・なんという心外な事柄だろう!
決して面には出さなかったが、僕は心の中でそう叫んでいた。
思っても見なかった事だからだ。
「何か心当たりはありませんか?」
そう続けるおかっぱ頭の目を見つめながら、僕は自らの様々な日常を考えていた。
ある。
心当たりがあった!
数年前に、突飛な場面でお手玉をしていたことがあり(僕はお手玉が大得意だ)、すらすらと3つのおじゃめを回していたのだが、よくよく考えてみたら右利きの回し方と反対周りだったのだ。
つまり、僕はお手玉をするときは左利きなのであった。
頬杖をつく時も左。スマホをいじる時も左。煙草を吸う時も左・・・。
そして、中学校の時まで没頭したサッカーのポジションは常に左サイドバックだった。左足でまあまあ正確なキックが蹴られるというのもなくもなかったが、フィールドの左側からの方が何故かゲームの流れを良く読むことが出来た。
自分では特に意識していなかったが、右サイドにいる時よりもチーム全体のバランスが整うとコーチが良く言っていた。
運動能力が高い訳でもなくセンスがあるわけでもなかったが、ゲームの流れを読んで自分の立ち位置や動きを調整するのが(敢えて言えば)得意だった。でも当時は何故左サイドが得意なのかは分からず始末だった。
ひょっとしたら、現在も日常的に身体の重心が掛かっているのは左側なのかもしれない・・・。
だから、四十肩が発症したのも左肩だった可能性も大いにある(知らずのうちに左側に負担をかけていたとか)。
「ちょっと考えたら、心当たりだらけです!」
僕がそう言うと、おかっぱ頭はハッとした表情に変りこう続ける。
「可能性の話ですが、ご両親が効き手を矯正された可能性はありますね。」
「ただ、効き側というのは小さい頃は分からないものなので、生来左利きだったことに気付かずに右利きとして育てられた可能性も大いにあります。」
・・・このおかっぱの言う事が本当だとしたら、45歳にして自分のプロフィールに関わる大きな発見をしたことになる・・・。そう思った。
その帰り、僕の胸は何故だかは分からないけれど、少しだけ踊っていた。まるで世紀の大発見をしたような、そんな気持ちにちょっぴりだけなったのかもしれない。
数日後、母から不意に電話があった。
「あのね、今度、いぼ痔の検査に行くことになったの。」
思わず吹き出してしまった僕に「笑わないでよ」と返す母。
どうやら、排泄の度に血が出る為相当苦痛な毎日を送っていたらしい。
折角なので、先日整形でおかっぱから聞いた話をしてみることにした。
「うーん・・・分からない!矯正したっていう事実はないよ。」
うーん、やはり・・・。
「でも、本当に生まれつきが左利きだったとしたらそのままの方が良かったよね。なんか・・・格好良いもんね。」
無邪気キャラの母らしい見解だが、凡そ同じようなことを考えていたので自嘲せざるを得なかった。
「気を付けてね。いぼ痔。」
そう言って電話を切り、短い親子の会話を終える。
・・・結局真相は分からず始末である。
母はこのような感じだったが、一応そのうち父にも聞いてみようかと思っている。何せ、ある意味自分の生い立ちにも関係していることだ。明らかになるならばしてみたい。
暫くして、母のいぼ痔の度合いはどんなものだったのだろうかと少し心配になった。詳しく聞く前に自分の効き側の話をしてしまったからだ。
また受診が終わったら電話して確かめてみよう。そう、一人で小さく呟いた。
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