YMのメンズファッションリサーチ

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【閲覧注意】恐怖体験談「車道の向こうから叫ぶ男の正体」

※これは、実際にあった不思議なお話です。怪談や怖い話が苦手な方はお読みにならないよう、お願い致します。

 

 

男は、幼少期は両親や親戚から「只者ではない、優秀な大人になるのではないか」と思われていた。

 

物心がつかないときから自動車が好きで、祖母がベビーカーに乗せて大通りの前の歩道に連れて行くと、行き交う自動車を見てキャッキャキャッキャと喜んでいたらしい。

 

やがて両親にミニカーをねだるようになり、おもちゃ箱の中は様々な種類のミニカーで溢れていった。

 

車の図鑑を買ってもらうと、食い入るように1日中眺める。そんな子供だった。

 

ある時から、いつものように祖母が大通りまで連れて行くと、まだまだ言葉を喋り始めて間もないにも関わらず、それなりのスピードで通り抜けていく自動車を指差し、次々に車種名を言い当てていく。

 

祖母は半信半疑だった。祖母自体が自動車の車種に左程詳しくなかったからだ。

話を聞いた父はある日祖母に代わり大通りに我が子を連れて行った。

 

父は驚愕したそうだ。

全ての車種が見事に合致していた。

 

それから、我が子の将来を嘱望するようになり喜んだのである。

 

・・・しかし、男は実は凡庸だった。

 

このエピソードに関しては、「好きなものにはのめり込み、異常な集中力を発揮する」という傾向というだけの話だった。

 

学校の成績は、小学校時までは上位だったが、中学以降は時を経るごとに徐々に下降していく。それでも上位グループであったことに変わりはないのだが、天才や秀才といった類では決してないことが明らかになっていった。

 

男は悟っていた。

 

自らが凡庸だという事を。

 

周囲の同級生たちと比較して、何か突出したような感覚を感じることがない。

もっと正確に言うと、「悪くはないが、圧倒的ではない」。

子供ながらに、自分は特別な存在ではないと自らを客観視していたのである。

 

天井が知れている中ではそれなりのモチベーションしか生じない。

周囲から過剰な期待を幼少期からかけられていた分、自らを責める傾向にあった。

実情と、周囲の評価の乖離に苦しんでいたという言い方が最も近しいかもしれない。

 

両親は心配していた。将来を憂い奮起を促すが、息子はそれに思うように応えてくれない。

 

特に父は厳しかった。自分の為だとか世間体の為だとかではなく、我が子の将来の為にやむを得なくだったと今ならばわかるが、男は当時それが理解できずに苦しみ、あたかも当然の成り行きかのように反抗し始めた。

 

不良ではないが未成年ながらに喫煙したり、飲酒したり、時には喧嘩もした。

 

問題ばかり起こすような、所謂「出来損ない」の典型になっていったのだった。いや、なっていったのではない。自らその領域にすすんで堕ちていったのである。

 

中学2年になったある日の夜、ふと死にたくなった。無意識ではなく、ある程度明確にそう思考していた。

 

将来の自分の幸せな姿が想像できず、意義を見出せない学校にも行きたくなかった。教師のことも信用できず、心を開くことが出来る仲間も少なかった。

 

楽に死ねる方法はないだろうか。

 

楽に死ねるのならば、それが一番良い。

 

そんなことを、2段ベッドの下の段で惚けっと考えていた時、周囲の空気感に異変を感じた。夜中の2時頃だった。

 

男はその時の感覚を、今でも鮮明に覚えている。

 

自分以外の全てのものの動きが止まったように感じ、色彩がなくなった。すべてのものが青白くみえる。

 

上の段には弟がいるはずなのだが、2段ベッドの梯子を掴み上を覗き込むと、そこには誰もいない。あたかもそれが必然のことであるかのようにである。布団も綺麗にたたまれていた。

 

背筋が凍るような気持ちになり、リビングへと走る。父親と母親が居るはずだ。

しかし、やはり誰もいない。

 

テレビは点けっ放しで、深夜のニュース番組が流れている。

キャスターの顔も、セットも全て青白い。内容は普段通りのもので、丁度その日のプロ野球の結果について解説が為されていた。夕方に見たものと同じ結果だから、時系列等に不自然な点はない。

 

男は1階の祖母のところへ走った。

祖母もやはりいなかった。

 

男は頭を搔きむしって狼狽した。

怖くて、とても家の外に出ることは考えきれなかった。何が待ち受けているのか分かったものではない。見てはいけないものを見てしまうのではないか。そんな気がした。

 

暫くすると、どこからともなく鈴の音が聞こえてきた。

「チリン、チリン」「チリーン、チリーン」

 

中学2年生にもなったのに、恐怖のあまり思わず失禁してしまいそうになる。

そして目からは涙が零れてきた。

鈴の音というものは、何故こんなにも人間の恐怖心を煽るのだろう。

 

「お父さん!お母さん!」

そう言いたかったが、口が動かない。

 

まるで自分の顎が針金のようなもので固定されているかのような感覚になっている。

いや、頭頂部と顎先を誰かに両手で押さえられている感覚という方が正しい。全く動かない。

 

恐怖。

今までに感じたことのない絶望。

過呼吸になる。

息苦しくて思わず胸を押さえる。

 

いや、でも・・・

 

「ここで死ぬのか」

 

そう思った瞬間に脱力した。

 

そうだ、そもそも死にたいって思っていたんだった。

 

それを思い出して、狼狽が鎮まった瞬間、鈴の音が止んだ。

 

次の瞬間、男は幼少期、祖母に連れて行ってもらっていた大通りに居た。

自動車が行き交っている。

 

・・・不自然・・・。

行き交っている車は、どれも古臭いものばかりだ。

 

要するに、幼少期の時によく走っていたものばかりだったのである。

 

「あの頃に戻った?」

 

男は気付くと、行き交う車の車種を次々に言い当てだした。

何かに促されたわけではなく、それはごくごく自然な行為のように思えた。

 

徐々に楽しくなってきた。

胸が躍る。

 

すると、車道の向こう側に誰かがいるのに気付いた。大人の男性だ。

白いシャツにグレーのスラックス。

ヘアスタイルはきちんとセットされていて少し茶色がかっている。

 

・・・知らない人だ。

 

でも、何故か懐かしい。温かい。誰なのかはわからないけれど、他人のような気もしない。不思議だけれども、そう思った。

 

何かを一生懸命に言っている。

車が行き交っている向こう側なので、声が聞こえるはずがない。車の走行音に掻き消されている。

 

しかし、そのうち頭の中に直接感じられるような不思議な感覚に変化してきた。

徐々に、何を言っているのか理解できてくる。

 

聞こえるというよりは、理解することができた。

 

「親の言う事を思い違いするな」

 

「将来を決めつけるな」

 

「馬鹿なことを考えるな」

 

多少汚い言葉遣いだけれども、とにかく懸命な様子だ。

 

何故か、熱いものが頬を伝った。心がスーッと晴れていくのが分かる。

 

拳を握りしめ、自分の爪が掌に刺さる。

 

・・・その痛みを感じた瞬間、気づいたら、また男は2段ベッドの中にいた。

 

上の段からは弟の寝息が聞こえる。

 

周囲の色彩は元に戻っていて、常夜灯のオレンジ色に照らされていた。

 

誰かが部屋に入ってきた。

祖母だった。

 

祖母は、トイレに起きたときに孫がシクシク泣いている声を聞いたらしい。

 

男は祖母に抱きついた。

祖母は何も言わず優しく抱きしめてくれた。

 

次の日の朝、いつものように目覚める。

いつもと同じ、穏やかな朝だった。

鳥の囀りが聞こえ、台所からは母親が朝食の準備をしている音が聞こえる。

・・・夢だったのだろうか。そう思いながらも、まだどこか釈然とはしない。

 

でも、頭の中が昨日までとはまるで違った。

まるで、曇り空の雲が晴れ、日の光が差したような気持ちになっていた。

 

朝食を摂り、準備をし、学校に向かう。

 

授業中に昨晩のことを思い返した。

 

車道の向こう側にいた男は、誰なのかはわからないけれど、一生懸命に自分のことを諫めてくれた事はわかった。

 

「親の言う事を勘違いするな」

根拠はないけれど、父親のプレッシャーは過度な期待が籠もっているわけではないのかもしれないと思った。

男は、父から優秀だと勘違いされていることに酷くプレッシャーを感じていたが、そういうわけではなく、自分の身の丈に合っている程度でいいから懸命に頑張るよう教育されているだけではないのだろうかと考えた。

 

「将来を決めつけるな」

将来の事なんてまだまだ分からない。この歳で諦めるのは早すぎるのかも。

 

「馬鹿なことを考えるな」

生きたくても生きられない人もいる。不自由を抱えながら生きている人もいる。

死ぬだなんて、考えて良いわけはない。

 

男の表情はほんの少し綻んでいた。

 

でも次の瞬間には、少し泣いていた。

 

何だったのかはわからないけれど、とても大事な経験だった気がした。

 

その日の夜、男は昨日のことを祖母に話しはしなかったが、暫く一緒に過ごしたかったので蜜柑をつまみながら暫く語らい合った。

 

両親には「ごめんね」と声を掛けた。

 

両親は何のことかよく分からなかったようで、曖昧に相槌を打っていた。

 

・・・時は経つ。

男は30歳になっていた。

 

順風満帆というわけではないけれど、一応立派に社会に出ることが出来た。

大学を出て、職務上必要な資格もほぼ全て取得し、会社では役職も付いた。

凡庸な自分にしては出来過ぎである。

 

父親からは「お前に役職が付いて人の上に立つなど、世も末だ。第一、まだ若すぎる。」

と時々こき下ろされるが、実はそこそこ誇らしく思っていることも知っている。

 

男は中学生の時に遭遇した、あの不思議な体験のことは殆ど忘れてしまっている。

というよりも、ほぼほぼ意識することがなくなった。

あの日以来、類似した、若しくはそれに繋がっているような体験さえも全くしていない。

 

ある日、男は出社の準備をし、家を出る前に鏡の前で最後に自身の姿を確認していた。

白いシャツにグレーのスラックス。

ヘアスタイルは最近少し伸びていて、そろそろ散髪のタイミングである。

カラーリングは半年に一度くらいの気分転換程度なので、現在はほんの少しだけ茶髪が残っている程度だ。

 

異変が起こったのは、正にその時だった。

 

唐突に、稲妻に打たれたのかと感じた。そんな感覚が走る。

 

電気のようなものが頭の先から足のつま先までを流れ伝った。

 

気付けば男は殆どオートマティックに声を発していた。

誰かに操られているような感覚では決してなく、自分の脳内から信号が放たれたような感覚だった。

 

「親の言う事を勘違いするな」

 

「将来を決めつけるな」

 

「馬鹿みたいなことを考えるな」

 

鏡の中の自分に、悪態をつくように叫ぶ。

形相は必死そのものである。

 

そして、男は全てを悟った。

 

例のあの体験の中で、車道の向こう側から自分に何かを伝えようと必死に叫んでいた人物は、この日の自分だったのだ。

 

仕組みはわからない。理由も分からない。

 

でも、間違いない。確信があった。

紛れもない、現実。

 

男はその場にしゃがみ込み、茫然とした。

打ちひしがれた。

悪い気はしなかったが、自分自身に起こった現象に驚きが隠せなかったのである。

 

脳の理解に、ようやく身体の反応が追い付いてきた。

 

体中から冷や汗が噴出した。床まで流れ伝のではないかというほどの量だった。

それから、身体が硬直して動かなくなる。

 

30分くらい、そのまま動けなかった。

その日、男は体調不良ということにして、欠勤した。社会人になってから、嘘をついて仕事を休んだのは初めてのことだった。

 

とても、精神的に仕事に行ける状態にはなかった。

一日中、頭の中の整理をする為にひたすら考えを巡らせていた。

 

・・・それから、その不思議な体験に続きはない。

 

あの日、中学生であった自分のところへ、時と場所を超えて未来の自分の意識が飛んで行ったのだろうか。

毎日が上手くいかず、塞ぎこんでいた過去の自分を憂いて・・・。

 

男には、本当のことはわからない。

 

随分長い時間、自らと向き合い模索したが、やはり不可解なことは多すぎた。

勿論、辞書にもインターネットにも、答えはなかった。

 

誰かに、このことを話したことはこれまで一度たりともない。

 

でも、あの時のあの体験がなければ、もしかしたら今ここに自分はいないのではないだろうかと思っている。

 

それだけは、何故だか確信めいているのである。

 

 

※この体験談の一人称は「男」です。これが筆者の体験か否かは、ご想像にお任せいたします。

 

 

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おまけ(きょうのネコ)

 

今からお尻を綺麗にするところです(笑)。

 

 

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