令和6年4月、501を買う
過去記事で述べたように、僕は元々様々な理由でリーバイスとジーンズを避けていた。古着もアメカジも好きだけれど、リーバイスとジーンズはちゃんと通っていない(ちゃんとではなければ通ってはいる)。
それはそれで良いと思っていたが、それはやはり駄目だと思った。
例えるならば日本食が好きで詳しいけれどお米を食べたことがないと言っているようなものだと思ったのだ。
フレンチが好きで詳しいけれどラタトゥイユなど聞いたことがないというのと一緒(しつこい)。
中華に精通していると言いながら好きな中華料理はエビマヨだと言っているようなもの(もういい)。←言うまでもないがエビマヨは正当な中華ではない!
通らないと駄目だな。やはり。
というわけで令和6年4月、僕はリーバイスのジーンズ2本と、ついでにラングラーのブラックジーンズも1本購入した。
今回はその中でもリーバイスの501についてレビューしていきたいと思う。
リーバイスとジーンズを始める禊ぎこそが501
リーバイスのはじまり
出典:リーバイス公式HP
普通は十分に蓄えた知識を以て蘊蓄(うんちく)を披露するところなのだろうが、「リーバイスとは」とか「501とは」などと大っぴらに語れるほどまだ僕はこの道に精通していない。だから出来るだけさらっと流したいと思う。「俄かが」等と叩くことだけは容赦されたい。自覚しているので。
「501とは何ぞや」を真に知りたい方はいくらでもネット上に記事も動画も落ちまくっているのでそちらを見て頂いた方が良いだろう。
ここで言いたいことは、リーバイスの501はリーバイスのはじまりの一本であり、そして全てのジーンズの祖たる存在だということだ。
出典:リーバイス公式HP
ドイツ移民のリーバイ・ストラウスが、かつてゴールドラッシュに湧いたアメリカの金鉱で働く人々の為のワークパンツを開発したという「起源の話」は、ファッションに興味のない方でも一度は耳にしたことがある有名な話なのではないだろうか。リーバイ・ストラウスは今考えても極めて有能なビジネスマンだと言える。文字通りここから現在にまで連なる果てしない規模の金脈をゴールドラッシュに嗅ぎ付けたわけだ。水平線いっぱいに溢れそうなほどのビジネスチャンスがそこにはあった。
リーバイ・ストラウスカンパニー(リーバイスの前身)が最初に作ったパンツはダック地のものだったそうだがやがてそれはデニム生地に変更され、色もインディゴブルーが採用された。インディゴに含まれるピレスロイドという成分をガラガラ蛇が嫌うからという理由で採用に至ったという説もある(知らなかった人は傍にある何かを叩いて「へえ~」と何回か言って欲しい)。あと、汚れが目立ちにくいから(こっちの方が信ぴょう性が高い)。
501の誕生
出典:リーバイス公式HP
しかし、まだまだここまででは現在流通しているジーンズの形を成しているわけではない。
このあと、リーバイ・ストラウスは自社のワークパンツの耐久性向上(アップデート)の為、取引先の仕立て屋ヤコブ・デイビスに相談する。ヤコブ・デイビスはポケットをリベットで補強するというアイディアを思いつき、これを採用。更に特許を出願する。一応ここのポイントをリーバイスのジーンズの誕生とするという説が最も有力である。
徐々に他社がリーバイス社のジーンズを模倣し始めた為、この特許とその少し後に品番統制を実施するのだが、最初の品番として命名されたのが何を隠そう501なのである。
まさしく現存するすべてのジーンズの原点にして至高。誕生してから130余年経った今も基本的なディテールはほぼほぼ変わらない501。まさにこれを通らずしてジーンズとリーバイスを語ることは恐れ多いのである。金字塔そのものなのだ。
リーバイスは現在では数えきれないほどのラインナップがあり、501もヨーロッパ企画や日本企画のもの等派生モデル(派生モデルと言って良いのか知らないが)も数知れないが、あくまでも本国アメリカ企画の501こそが最も正統であるという見解は昔も今も変わりはないという。
世界中どこを探しても、こんなアパレルアイテム等ほぼほぼ存在しないだろう。リーバイスの501だけはジーンズはおろかファッションに興味がなくても覚えておくべきだと言っていいかもしれない(軽く流したいと言っておきながらついつい長く書きすぎてしまった)。
リーバイス501のレビュー
今回の個体の説明
まずは簡単に今回の個体の年代判別をする。
最も簡単に判別できるのは内タグ。
一番下の行の真ん中に「0396」とある。これは即ち96年3月製造ということになる。
因みに左側は工場の番号を示しており、アメリカの工場は600台。調べてみるとミシッシッピ州のボールドウィン工場とのことだ。
リーバイスは2003年のサンアントニオ工場の閉鎖を最後に(基本的に)アメリカ製の501の生産を終了させる。以降は外部協力工場での生産となるので、そうなる7年前の個体ということになる。
90sのアメリカ製501の価格は今のところまだまだ異常なほど高騰してはいないがジワジワと上がっているのも事実。当たり前の話だが年々個体数は減っていくわけだから何十年か後には90sのアメリカ製のものも希少になっていく可能性は高いわけだ。
内タグによる判別は(今回は90sだが)年代によって若干異なる。こちらも例の如く判別方法がネット上にいくらでも落ちているので見てみると面白いと思う。年代の判別をタグやディテールから行うのは古着ならではの楽しみ方だ。とても面白い。
内タグだけではなくパッチやトップボタン、そして各所ディテールでの判別も出来るので興味のある人は調べてみるといいだろう。
501の特徴
- フロント
501のフロントはボタンフライになっている。
大体多くのパンツのフロントはジッパーフライになっていると思うが、ジーンズの祖らしいクラシックなディテールだと言える(501Zというジッパータイプの501も存在してはいる)。こののタンフライを鑑みると、ジーンズに置いて正統なフロントはジッパーフライではなくボタンフライなのだということを改めて実感してしまう。
今回の個体はユーズドなのでボタンの開閉はし易かったがこれがリジッドだと固くて大変は大変である。正直言って合理主義者にはあまり有難くない構造ではあるだろう。・・・かくいう僕もジッパーフライの方がありがたいと思っている派だ。だって、便利だもの。
ボタンフライは実は身体に沿ったシルエットになるという利点もあるようだが、余程凝視しないと分からない程度だと思う・・・。大体フロント部分は急所に近いので余り凝視されることはないのではないだろうか(決して変な意味合いはない記述だ)。
- シルエット
501のシルエットは基本的に「レギュラーストレート」とされている。
直線的でベーシック。これぞ基本形にして王道である。
ただし年代によって少しずつ太さや股上の深さは違っているらしく、王道ではありながらも時代のトレンドに合わせたモディファイは行われている様子である。
こちらの個体は90年代後半のものだが(多分)若干太さがあるような気がした。股上も深さを感じる。
- バックポケット
501のバックポケットは正方形に近いフォルムをしていると言われている。
他の品番と違いあくまでもリーバイスのランドマークである501のディテールはやはり奇をてらわないのだということがここでも分かる。
因みにリーバイスのポケットのステッチはアーキュエイトステッチというが、言わずもがなヒップ部分の強度を確保するための役割を担っている。
今では様々なジーンズブランドが各々のステッチをバックポケットに施しているが、もしもリーバイスがアーキュエイトステッチを施さなければそれらの存在はなかったのかもしれない。やはりすべての祖はリーバイスなのである。
コーディネート
- 全身
サングラス:MOSCOT(モスコット)レムトッシュ ジャパンリミテッド15
トップス:ラルフローレン
パンツ:リーバイス501
シューズ:コンバースタイムライン23SSワンスター
173㎝60㎏でW32L34を着用。
サイズはW=ウェスト、L=レングス。ウェスト32は僕にはかなり大きめだがベルトで締めると調子が良い範疇だ。
インチを若干上げて選ぶと太さにゆとりが出て履きやすくなるのは良く知られた話。勿論501なのでジャストで履くのが正しいのだろうがこのくらいの方が安心はするのだ。
レングスも長めの34だが若干裾を溜めて履くのも悪くない選択だ。時にはロールアップしても良いだろう。
・・・というか、古着なので自分のサイズと出会うか出会わないかという側面が勿論ある。やや自分の狙いとの差異があったとしても着こなしの幅を持っておいて、出会ったものに合わせた着こなしが出来れば選択肢の幅が拡がるというものだ(だから古着は慣れていない方にはハードルが高いと思われてしまうのだろうが)。
501は先述したように王道的なディテールで良くも悪くもアクセントがない為、着こなしが簡単かと言えばそんなことはない。全く以てない。いわば中級者以上向けだと思う。普通に穿いてもお洒落に着こなすのはなかなか難しい。
僕はこういうパンツを穿く時はトップスでアクセントを付けるのが正解だと思っている。今回はかなり大きめなサイジングのラルフローレンのシャツを合わせた。カラーもやや個性を発揮できるダークパープル等にすると抑揚が表現できると思っている。
- 足元
ラッセルモカシン スポーティングクレーチャッカとの合わせ。とても正しい感じがする。正しい感じがして若干むず痒い。そもそも普段の自分は「正しさ」からいい意味で距離を取るのが信条だからだ。許される範疇のぎりぎりにこそ個性があるというものだと思っている。
しかし、「正しい」格好がしたいと思う時も時々あり、そういったときにこれは良いかもしれない。
こちらはニューバランスM990v6。ダッド寄りのスニーカーは上手く合わせないと難しいかもしれない。余程弁えていないとただのおっさんのようになってしまいかねないので注意が必要だろう。特に私のような実年齢がおっさんの人は避けるべきかもしれない。逆に若い人はそのアンバランスさを活かしたコーデが出来る可能性は高い。
ビルケンシュトック ロンドンとの相性は良さそうだ。恐らくビルケンシュトックのクラシックなモデルは全般いけるだろうという手応えがあった。
パラブーツのコローとの合わせ。コインローファーとは合わない訳はないといった感じだが、初心者にも入りやすいコーディネートだろう。多分自分も困ったら頼ることが多くなりそうだと思う。
リプロダクションオブファウンドのグルカサンダルとの合わせも具合が良い。基本的にレザーシューズ類とは親和性の高さが感じられる。
まとめ
今回購入した501は先述したように96年アメリカ製の個体で色落ちもそれなりに進んだものだ。ヴィンテージとまでは行かないものの、なかなか良い色落ちだし悪くないという感触を持っている。
最初の一本としては勿論現行のリジッドという選択肢もあったわけだが、過去記事で述べたように兎に角固いジーンズが苦手なのでリジッドを購入しても穿かなくなってしまう可能性があった。
まだまだ10,000円以内で購入できる90年代アメリカ製の501は結構狙い目なのかもしれないし、穿きやすさも申し分なかった。もしも僕のように501に初挑戦してみたいという方には(古着に抵抗がなければ)意外とおすすめである。
ただし、繰り返しになるが501は決して「一発でオシャレに見える」初心者向けの一本というわけではない。抑揚のないベーシックなシルエットな為、よく考えてコーデしないと残念ながら変哲のないジーンズとなり果ててしまいかねない。
もしも「オシャレに穿けるリーバイスのジーンズはありませんか?」と訊かれるならば、どちらかというと後日レビュー記事をアップしようと思っている550の方がおすすめだ。太目のテーパードシルエットで元々ファッション用途として開発されたものだしそもそも理に適ってもいる(501は言わずもがなファッション用途として作られたものではない。ワークウェアだ)。
しかし、501は全てのジーンズの原点にして、未だアメリカのリーバイス本社が至高だと宣言し続けているジーンズだ。
その意味は所有してみてやはり実感することが出来たと思う。
僕が感じたのは圧倒的に「正しい」といった感触である。
例えばボタンダウンシャツにおけるブルックスブラザーズ、ダウンジャケットにおけるエディーバウアー(スカイライナー)、バスケットシューズにおけるチャックテイラー(オールスター)等と似た論理だ。
おにぎりでいえば梅、日本ネコならばキジトラ、トヨタならばカローラだ(もういい)。
この「正しさ」というのは極めて重要で、ファッションを論じる上での根拠の一環となるものである。
これまでリーバイスを避けていたがそんな自分が恥ずかしくなった。もっと早く動くべきだった、そう改めて感じさせられた。
これからこの世界に沼って行くのかどうかは分からないけれど、まあそれは置いておいて、取り敢えず安心したわけであった。
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